
コモンズ農園プロジェクトは、農業だけでなく展覧会やワークショップなどさまざまな形式で実践されています。ここではプロジェクトと関係する様々な試みを通して、個人や共同体のなかで培われてきた場所や植物との関わりかたを紹介しています。
これまで廣瀬は、これまで3万個以上のレモンを敷き詰めて香りを空間に充満させる作品、人々が脚を延ばし語り合える大きな絨毯の作品、貧富の差なく食欲と栄養を満たす豆類と高価な金属類を宇宙の星のように配置する作品、果物やスパイスのための家などを制作してきました。人間と地球環境の接点にある食と農業は、つねに創作の中心テーマであったといえます。
廣瀬の場所との関わり合いは、1996年に建築家の植田暁と一緒におこなったワークショップ「生きられた土地」に遡ります。これは、バブル経済の崩壊によって現れた空き地にどのように公共性を回復させるのかを問いかけるものでした。
その後も食と農に関心を向け続けながら作品を制作し、紀南アートウィークの活動と出会います。そのなかでも「みかんダイアローグ」は、田辺で柑橘農業を営む若手農家の鼎談を通じて、もっと多くの人たちと一緒に農業の実践を通して現代の社会や地球環境について考える可能性を示唆してくれるものでした。
そして2022年におこなわれた「みかんマンダラ」展に参加し、田辺市秋津野にある直売所「きてら」に隣接する「ゆい倉庫」で「みかんコレクティブ」を展示します。この時点で、農地を取得することはまだ想定できていませんでしたので、できるだけ多くの人に実際にまず柑橘類を育てる経験をしてもらい、いつか農園の活動が始まるまで苗木を預かる里親になってもらう「みかんの苗木の旅」をおこないます。
翌年2023年の紀南アートウィーク「みかんかく」では、視覚、触覚、嗅覚を使ったワークショップ「いちどためしてごらん」を実施し、参加者と知覚の曖昧さと感覚の豊かさに意識を向ける経験を共有しました。こうした地域の人たち向けの試みと同時に、柑橘農家の協力を得て実際に農園をなん度も訪問し、プロジェクトの構想について意見交換を重ねてきました。
同年11月には長野県立美術館で展覧会「みかんの旅」がおこなわれ、田辺以外の場所でもプロジェクトの構想を伝える機会になりました。
2024年の紀南アートウィーク「いごくたまる、またいごく」ではワークショップ「粘土団子の旅」をおこない、自然の力によって植物の種を発芽させる試みをおこなっています。また同展では、南方熊楠が提唱した異なるものが交わり、それが固定されずに移動する場所「萃点」にインスピレーションを受けた作品も展示しました。
そうこうしているうちに、とうとう2025年に上秋津野で農薬を使わず柑橘を育ててきた女性から農地を提供いただくことになりました。農地の歴史については、「リサーチ」にオーナーのご家族から聞いた話が記されています。実際に農業の活動を開始するにあたり、周辺地域の歴史を詳しく知るために柑橘農家でもあり郷土史に通じた原和男さんにご案内いただいたフィールドワーク[上秋津フィールドワーク]と、「テリトーリオ」と「文化的景観」という概念を通して歴史的に形作られてきた風景の見方について植田暁さんから説明していただくレクチャー[地域を織る―座談会『田辺の文化的景観』]を実施しました。

・生きられた土地
・みかんダイアローグ
・「みかんマンダラ」展
・みかんコレクティヴ
・みかんの苗木の旅
・いちどためしてごらん
・「みかんの旅」展
・粘土団子の旅
・上秋津フィールドワーク
・地域を織る―座談会『田辺の文化的景観』
