廣瀬智央個展 みかんコレクティヴ
日時:2022年10月6日(木)~10月16日(日)
場所:田辺市秋津野ゆい倉庫

本展は、2022年に開催された紀南アートウィーク「みかんマンダラ」展の一環として、和歌山県田辺市秋津野のゆい倉庫にて開催された廣瀬智央の個展である。展示は、のちに展開される〈コモンズ農園〉の構想を予感させる重要な起点となった。

本展では、みかんを単なる農産物や視覚的な対象として扱うのではなく、その背後にある時間や関係性に着目した。作品は完成されたオブジェとして提示されるだけでなく、素材となるみかんを育てる過程、そこに関わる人々の交流や思考の蓄積を含めた「プロセスそのもの」を作品として捉える試みであった。

この発想から、みかんを育てる農園の立ち上げが構想される。育てること、関わること、時間を共有することを通じて、人と人、人と自然のあいだに新たな関係が生まれていく。その過程を開かれた場として持続させることが、アートの実践となりうるのではないかという問いが、本展の核にあった。この長期的な構想の中心に位置づけられたのが〈コモンズ農園〉である。農園は、実際に柑橘を育てる場であると同時に、多様な人々が関わり、異なる価値観が交差する「見えない関係の場」でもある。時間の経過とともに、農園にはさまざまな出来事や実践が重なり、風景や意味が更新されていく。

また、本プロジェクトに関わる人々の協働の枠組みとして「みかんコレクティヴ」が構想された。これは、知識や経験、時間を共有しながら、ともに考え、関係を育てていくためのゆるやかな集まりである。所有や効率とは異なる価値観のもとで、人々が関わり続けるための一つの実践として位置づけられている。「みかんコレクティヴ展」は、作品と農園、制作と生活、個人と他者といった境界を横断しながら、アートのあり方を問い直す試みであった。そしてその問いは、現在進行中の〈コモンズ農園〉へと引き継がれている。


